国土交通省 無人航空機登録講習機関
登録番号:国空無機第 236461号 国空無機第 236462号
事務所コード:T0047001
少子高齢化や職業選択の多様化などの影響によって、近年漁業の労働人口が減少傾向にあります。また、就労者の高齢化も問題になっており、漁業における業務効率化の必要性が高まっている状況です。
一方、漁業を営む業者の多くが家族経営であることから、スキルの俗人化やブラックボックス化が発生しやすく、生産性が上がりづらい点も課題といえるでしょう。そのような中、ドローンを活用することで、業務効率化につなげる活動が注目を集めています。
今回は、漁業におけるドローンの活用例に興味がある方のために、実際の活用事例を紹介します。
まずは、空中を飛行する一般的なドローンを漁業に活用した事例を紹介します。
従来、中規模のカツオ漁船などでは、魚群を発見するためにレーダーを用いて魚を狙う海鳥を探知し、該当の場所に赴いて漁を行うスタイルが一般的です。ただし、実際に魚群を確認するためには、船を現場まで移動させて人が目視する必要があります。
海外の大規模なカツオ漁では、ヘリコプターを使って魚群を発見する方法を実施しているのですが、コストの問題もあり導入できる国内の業者はほとんどいない状況でした。そこで、ヘリコプターに替わる魚群を発見する方法として注目されているのがドローンの活用です。
遠隔操作のドローンが海鳥を探知して魚群を発見できるため、効率よく漁を行うことが可能になります。これによって、人件費や船の燃料費などの削減につなげることができるでしょう。
漁業では赤潮や水カビなどが発生することで、事業に深刻なダメージを与えるケースも多いです。そのため、養殖などを行っている企業では、定期的に養殖場を監視する必要があります。
しかし、大規模な養殖場を持つ場合、管理する業者の負担も大きく、赤潮や水カビの発生を未然に防ぐことが難しい状況でした。そこで、ドローンで空撮した映像をAI解析することで、赤潮や水カビの初期症状を早期感知する実証実験が行われており、被害を最小限に抑えるための有効な手段として現場への本格導入に期待が集まっています。
ドローンは空を飛行するタイプ以外に、水中を移動できる水中ドローンがあります。水中ドローンは「ROV(Remotely Operated Vehicle)」とも呼ばれており、水中での撮影や検査などに活用されていました。
そして近年、水中ドローンを漁業で活用する事例が増えている状況です。
定置網漁を行う業者が、水中ドローンを有効活用する事例を紹介します。
定置網漁を行う業者にとって、定置網のメンテナンスに伴う確認は大きな負担がある作業です。もし網が破損していた場合には、早急に修復する必要があるのですが、定置網の範囲は非常に広く、人が水中を潜って確認すると大きな負担がかかります。特に冬場は水温が低くなり、厳しい作業になることは想像に難くないでしょう。
一方、定置網漁は基本的にどのような魚がどれだけ網に入っているかについては、網を上げてみなければ分からないというデメリットがあります。そのため、ときには期待した取れ高が得られない場合もあるでしょう。
こうした課題を解決するために、水中ドローンの活用が始まっています。例えば、カメラ付きのドローンを遠隔操作することで、定置網の破損個所を見つけたり、定置網の中の状況を事前に確認したりすることが可能です。定置網のメンテナンスと漁の取れ高をコントロールできることで、生産性を高めることができるでしょう。
養殖を営む業者においては、生け簀のメンテナンスや魚の体調管理などの作業をすべて人が行う必要があり大きな負担になっていました。しかし、水中ドローンの有効活用によって、生産性を向上している業者が現れはじめています。
最近は水中ドローンの技術が進化し、水深100mまで潜れるものや、6時間程度連続稼働できるものも登場しています。また、4Kで収録可能なカメラや高機能な照明を搭載することで、水中の様子が手に取るように把握できることはもちろん、ロボットアームの活用によって幅広い作業の実施が可能です。
水中ドローンは主に生け簀を囲う網の状況を確認して痛んだ箇所を早期発見する用途や、魚の健康状態を把握する用途で活用されています。魚の死骸やごみなどをロボットアームで取り除ける点も大きなメリットだといえるでしょう。
空や水中という、人だけではアプローチが困難な環境でも、ドローンを活用することでスムーズに業務が進められるだけでなく、生産性を向上することもできるでしょう。まだまだドローンを活用している業者は少ないと思いますが、漁業で急務な課題となっている省人化を解決する有効な手段の人つといえるため、導入を検討する価値は十分あるでしょう。